腸は消化器に分類されますが、腸の生態系はそれで終わりません。免疫力にも関与し、神経細胞も多く、数種類のビタミンやセロトニンなどの神経伝達物質も作ります。
進化過程を見ると、腸は脳よりも早く作られ、脳が発達するまでは腸が独自に必要な神経系を備えていました。
☆脳以外で神経細胞が最も多く分布しているのは腸です。
脳には1,000億個の神経細胞があり、腸の神経系には3~5億個の神経細胞がありますが、これは脊椎にある神経細胞の約5倍にあたります。それにより、腸を「第2の脳」または「腹脳」と言います。
このような腸の神経系は、脳とは独立して運営されており、まるで脳のように情報を受け入れて処理し、消化器に命令を送ります。腸の神経系と脳の連結が切れても腸の神経系は活動し続けます。ある意味では、脳より腸のほうが生命現象の維持に根源的な役割をしていると見ることができます。
☆実際、脳死状態になっても腸は機能していますが、腸の機能が止まれば脳の機能はすぐに停止します。
腸は、脳と同じように感情状態に関与する神経伝達物質も作り出しています。幸せホルモンと呼ばれるセロトニンは90%以上、快感物質のドーパミンは約50%が腸で生成されます。これは私たちが感じる感情に腸が与える影響がとても大きいということを意味します。
東洋医学でも腸が感情の消化を担当していると見ています。不安、怒り、恐怖などの感情的なストレスは腸機能を萎縮させ、これによって腸の健康が悪くなれば、肯定的な感情に関与するセロトニンやドーパミンの生成が低下し、悪循環に陥ります。
急増しているうつ病や不安障害は、脳よりも腸の問題の可能性があります。腸の緊張をほぐすだけでも、このような症状の改善が期待できます。腸の健康は良い気分を維持し、満足感や意欲を感じるための必須条件なのです。
注意欠陥·多動性障害(ADHD)、自閉症、アルツハイマーなどの症状も腸の状態と関連があり、腸の状態を改善することによって、このような脳の病変に好転反応が見られるという研究結果が報告されています。
☆腸が硬くなると、血液循環が滞って心臓に負担を与え、そうなると脳もその負担を抱え込むようになります。
腸をほぐすだけでも心臓と脳につながる問題を予防し、全般的な健康状態を改善できます。
腸と脳のヨガトレーニングでは、腸の動きを促すことで、強力な集中とリラックス効果が現れます。よく集中でき、早くリラックスします。
また、腸呼吸は吐き出す呼吸にポイントを置いていますが、吐き出す呼吸が副交感神経を活性化し、リラックス効果をさらに高めます。集中して呼吸し、リラックスしていくうちに、硬くなっていた腸の緊張と共に感情的な緊張も解消します。
腸呼吸を5分行うだけで、緊張している身体と心を楽な状態に転換することができます。